2008年06月19日

その人のきっかけ #2の3

カリフォルニア在住のN君の場合、その3



お礼奉公、、、、、。

アメリカの日本人社会では、今でもそういう習慣が残っている。


無事グリーンカード取れたからといって「はい、お世話になりました、これにて辞めます」というのはやはり日本人感情には馴染まないのか、、。


N君の場合は、結局グリーンカード取れてから3年間その店で働いた。

実際3年間のお礼奉公は、他の人の場合と比べると長い。
だからN君は十分礼を尽くしたといえるだろう。
しかしやはり辞める時には「裏切り者」呼ばわりする人もいた。

グリーンカードを持つもの持たないもの、明日が見えない人たちからすれば、嫉みとか嫉妬とか、そういう感情も湧いてくるのか、、、。

そういえば、同胞のチクリにより強制送還になる率が日本人が一番多いそうです。
そういうのは、確かに、寂しい。

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N君はスカウトされた。

その店の常連としてスシバーに来てN君が握るスシを食べていたチャイニーズアメリカンの実業家がN君を引き抜きに掛かったのだ。

その実業家を入れて3人のパートナーの共同資本で、大規模な新しいモダンアジアン料理のレストランをベイエリアにつくる、ついてはそこの総料理長にN君を、そういうことだ。

大抜擢だ。

広い箱、斬新なインテリアとコンセプト、チャイニーズでもジャパンーズでもない無国籍なモダンアジアン料理に、一流ホテル並みのサービスを取り入れたレストラン。
心は動いて当たり前です。


N君はそこで2年間、ハタから見ていても濃密に生き生きと働いていました。
一人色が違うキャップを被り、ワインレッド色のシェフコートを着て、オープンキッチン内で大声で英語で指示を与え働くN君は実際誇らしかったです。シビレましたね。
N君としても、たとえアメリカで暮していたにしても、実際にはこれが初めてのアメリカ社会、日本人が一人も居ないこの環境の中で、気持ちは高揚していたでしょう。
ましてやそこの現場の責任者ですから、なお更高ぶります。


そこを去るきっかけは、N君を誘ったパートナーの失脚でした。
それとともにN君も更迭されたということです。
アメリカらしいことです。


N君は、店を去ると、郊外に引越し、無職を楽しむことにします。
グリーンカードを取る前、一番最初の店が潰れた時以来の休暇です。久しぶりの休暇です。だからのんびり楽しむことにします。

引っ越した先のアパートメントの一階に小さな日本食レストランがありました。
スシバーに一人、キッチンに一人、ウエイターが昼一人、夜になるともう一人、そういう本当に最低限のお店です。
N君は時々一人でそこでランチを食べます。
ニュージーランドやオーストラリアや、カリフォルニアに来た当初のことをそこで思い出したりもします。そういう懐かしさがあります。市内と違う郊外の街並みのせいかもしれません。
空気がゆったりなのです。
ついこの間までいたアメリカビジネス社会とはまったく違います。

何度目かのランチの時、店前に手書きの募集チラシを見つけ、N君はその店でランチタイムだけ、ウエイター、として働くことになります。

特に履歴書とか書く必要はありません。ソーシャルセキュリティーナンバーがあること、グリーンカードがあること、その証明だけで即採用です。
郊外のこの店にN君の顔を知った人はそうたくさんはいないでしょう。しばらくバレることはなさそうです。

そういうのも悪くない、とN君は楽しそうです。
ウエイターをやってみたかったらしく、そしてやってみると楽しくて仕方ないといった感じです。


半年くらいそうやって過ごし、やがて昔のツテで市内の老舗店からスシシェフとしてお声がかかります。

昔から年上の人にかわいがられていたN君のことです。
人徳というやつです。

そして、昼はなぞのウエイター、夜は老舗のレストランのスシシェフ、そういうスタイルの暮らしが始まりました。

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夜の店は今でも続いています。
かれこれもう10年近いかもしれません。
N君はその店の花板となり、その街の有名なスシシェフとなっています。

ウエイターをしていたレストランではもう働いていませんが、今ではそこのオーナーとも良い友達みたいです。

N君が現場復帰してからも同業者であることはバレることなく、素直な良いウエイターとして働いていたN君です。

ただ、夜も働かないか?とか、キッチンやってみないか?とか誘っても、いつもその場しのぎの曖昧な返事しかしないN君のこと不思議がっていたみたいです。
ランチだけで、どうやっても生活できないだろうに、、そう思っていたみたい。

そしてある日、このオーナーが市内にたまたまやって来て、しかも偶然N君の働いている店に入り、そこでスシを食べ「あっ!」となったということです。
その時も、怒るということではなく、大笑いということみたいでした。



N君は、今でもあの街で働いています。



そういえば、N君、独立とかは考えていないのかい?

気が付かなかったけど、君も僕も、いつの間にかもう四十過ぎているんだぜ。驚きだろう?


それとも、まだ世界旅行の、途中なのかい? 










posted by 海外ロングステイ相談室 at 21:02 | ホノルル ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | ○あの人のきっかけ