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1970年代後半、最初の日本のハワイ島不動産会社からいち早く独立したかつてハワイアンパラダイスパークを主に扱っていた会社は、今もまだ存在する。
ただその姿はハワイの(オアフ島の)一般不動産会社へとすっかり変わっていて、ホノルルのコンドや戸建てを扱っている。
尚時々、過去の顧客よりハワイ島の土地の売却を相談されると、ハワイ島の不動産会社を通じ、その再販を手伝っている。
しかし、MLSで見かけるそれら売り物件は、明らかに相場価格より高額で掲示されており、おまけに物件写真の数は乏しく貧しく、動画は当然のようにない。
ずっと長い間市場に掲示されっぱなしという有様だ。
ハワイアンショアーズを主に扱っていた会社は、何度も社名を変え、そしてその間本来の代表者は故人となり、それでも遺族や元関係者の手により、現在でも運営されている。
業務内容の多くは、過去の元顧客たちの「管理」。
例えば、「近隣住民から苦情が出ていて、土地内の木々を伐採しなくてはならない」と伝え、現地でなら本来千ドル程度で済むはずの伐採工事にでも、数千ドルあるいは時に桁が一つ違う金額を請求してくる。
大方の元顧客たちは、ハワイ島へ行かずに日本で居ながらにして購入しており、せいぜいが視察旅行と称して購入後ただ一度訪れたきり、もうそれから十年以上歳月は流れている。
情報はない。
気付住所ということで、全ては大本営発表だから、従うよりない。
管理してもらっていたはずなのに、なぜ木々がそれだけ伸びてしまったのだろうと、普段なら思うだろう疑問もその時には気づかない。
そもそもそこはもともと「近隣住民」などない土地だけの周囲だったりもする。
毎年支払う固定資産税は100ドルとかその程度。
「ハワイの不動産はなんて固定資産税が格安なのだろう!」
もちろんそんなことはない。
固定資産税と不動産評価額はリンクしている。
購入した金額が高額だったからといって、本当にそうだったとは限らない。
「実際に買ったのは固定資産税が100ドルほどの不動産であった」、それだけが事実なのだ。
時に「今のうちにお子さんの名義を入れ、相続対策をしておいた方が良い」とアドバイスし、評価額1万ドルほどの土地にあり得ないほどの名義人の数を詰め込む。対策どころか、これだと逆に売却時には余計な手間と出費を産むだけだ。おまけにその名義変更料はべらぼうな金額とくる。
売りたい顧客から「売るための費用」を徴収し、やはり相場とかけ離れた高額な売値で現地市場で売り出す。
もちろんいつまでも売れない。
会社は、売るための費用を徴収しているので、痛くも痒くもない。
でも、売るための費用って、そもそも何?
「溶岩によりもう市場がなくなった」、だからと逆に今の現地相場以下の金額で、会社が直接買い取ろうとしてくることもある。
そして自らが新所有者となり、現地で売却する。
こんな所業、正業とは呼ばないだろう。
しかしなかなか捕まらないし、終わらない。
被害者も現れない。被害者だと気がつかない。
仮に揉めても、その一件だけを和解に持ち込み、その和解金はまた別の元顧客の木々の伐採費用で補填する。
そのうち揉め事の数は増えていく。
そして、再び会社を閉鎖し、やがて新会社をまた起こす。
まだ、あるのだ。
手を変え、品を変え。
今、ハワイアンパラダイスパーク、アイナロア、ハワイアンショアーズ、西のワイコロア、などなど、固定資産税とは違う、分譲地の自治組合費の滞納が問題となっている。
実際何年も自治組合費を延滞のままでいる区画は多い。
もともと支払う義務のことを知らない、知らされていない、そういうケースは多々あるのだろう。
あるいは既に所有者が故人となり、遺族はその後どうしたら良いかわからないまま放置ということも。
評価額の高いワイコロアあたりだと、あっという間に強制執行されてしまう。組合が競売にかけるのだ。
しかし評価額の低いハワイアンショアーズとかアイナロアあたりだと、競売にすらかけられない。経費の方が高くつくからだ。
だからずっと滞納まま、所有者の名前が組合費滞納者、税金滞納者として記録に残り続けることになる。
大好きだったハワイでそんな風に名を残してしまう。
1970年代から、既に半世紀近くが経とうとしている。
でもまだ、過去ではないのだ。
〈終わり〉
「海外ロングステイ相談室」ができて、今年で12年目となります。
でも最初の頃となーんにも変わってはいません。
いつでもここはあなたのための個人的な相談室です。
どうかお気軽に何でも訊いて下さい。
笹本正明
海外ロングステイ相談室
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